酒飲みのおっさんは思うのです。
日が暮れたら帰りましょう、と。
自分のまちなら馴染みの店に一軒寄って軽く飲み、
よそのまちならそのまちよく知る友を呼び、
心ゆくまで飲みましょう、と。
それで今夜は枕崎。
枕崎ならこの人でしょうということで、
副市長の小泉智資さんと飲み歩く夜の港町。

市役所を出て国道226号を東に走る。しばらくすると新しくなった看板が東の空に浮かび上がる。

すし匠五条 地・産・地・消 枕崎の美味

立神に跳ねるカツオのイラスト。間違いなくここは枕崎なのだ。
「美味い魚を食うならここだ」と小泉副市長。店構えは、ここは祇園か曽根崎かと思わせる高級感が漂っている。それもそのはず、親方の板敷重文さんはかつて関西の寿司店で修業を積み、奈良県五条氏出身の浩実さんと出会い結婚し郷里枕崎に戻ってこの店をはじめた。

長いカウンターに、副市長氏、相方のタニカツさんと3人並んで落ち着く。寿司屋はこうでなくてはならない。長いカウンターはひとり客を大切にしている証拠なのだ。ひとりでもゆっくりつまめてゆっくり飲める。ただしカウンターに並んでいいのは3人までだ。それ以上の人数なら、迷わず小上がり、テーブル席へ。家族づれからグループ、ひとり客まで幅広い客層を大切にしようという表れだ。

カウンターに腰を落ち着けると、すっと出される一椀。
「稚内の昆布と枕崎の鰹節でとった出汁で食べていただくお蕎麦です。ひと口だけですけど」
女将浩実さんの笑顔付きだ。関西風のいい出汁がきいている。これで食欲も増そうというものだ。

JR最南・北端の始発・終着駅があることが縁で友好都市となった北海道稚内市と枕崎市。両市の特産品「昆布」と「鰹節」から「コンカツプロジェクト(昆鰹・婚活)」がスタートした。新たな交流事業を展開し、両市のPRに勤めようというものだ。ちなみにその仲人をしたのは縁結びの神出雲大社のある出雲市だそうだ。 

さてと、酒は……。「これでしょ」と副市長がカウンターの上に置いたのは、枕崎が誇る白波の限定品「MUGEN」。お湯割にすることを前提につくられた焼酎だそうだ。では迷うことなくお湯割に。地元の魚に地元の酒。よそのまちで楽しむジモティの味というとことだ。
この焼酎、濃いめのお湯割にするとトロッとした感じで、濃厚で甘い香りが口の中にひろがるのがすごくいい。「MUGEN」という銘はきっと、果てしなく飲み続けるという意味なのだろう。

さてと、つまみは……。ここはやはり副市長氏にお任せしよう。
枕崎は実に美味いものがたくさんある。海のものだけではない。それを実感できる夜になった。まずは刺身の盛り合わせだ。これは当たり前と言えば当たり前だが、ちゃんと仕事の行き届いている。さすがは港町というより、親方の腕がいいんだな。無口だけどちゃんとやることはやってます、みたいな感じがいい。酒飲みの私には、これだけでもOK。3人でつまんでも十分すぎる量だ。しかし、酒を一切飲まないタニカツさんには、さらなる料理が必要なのだ。

ということで鹿籠豚の角煮を。鹿籠豚は枕崎で生産される黒豚のことで、地元で採れるさつまいもなどを飼料とするなど、様々なルールを満たさなければその名を名乗ることはできない。枕崎が全国に誇る特産品だ。その角煮は甘く柔らかい味がする。

鰹ステーキオリジナルソースは、えっ、これが鰹なの?と驚かされる味だ。まるで本物のステーキを食べているような……。おかしな表現だが濃厚であっさりした味と言えばいいだろうか。刺身もいい、たたきもいい、だけどステーキもいいと思わせてくれる。隣でタニカツさんが唸り声をあげながらうなずいている。

さらに産地でしか食べられないものも食べないと! ということで珍子の串焼きを。珍子とは鰹の心臓のことだ。これは新鮮でないと食べられない。鰹の水揚げ港、鰹節の産地ならではの珍味だと言っていい。

そして鰹豚フライング。なんだこのネーミングは。これは鰹を鹿籠豚のスライスで巻いてフライにしたものだ。口にすると鰹と鹿籠豚の相性に驚くはずだ。これはもうお見事というしかない。五条の親方、あるいは女将か、かなりの発想の持ち主だと納得する。いやはや満足の味だった、おかげでお湯割の進んだこと進んだこと。

さて、話題を乱暴に地方創生に戻す。ほとんどの人が行政が中心になって推進する取り組みやプロジェクトに目がいく。たとえば「コンカツプロジェクト」だってそうだ。行政が旗を振るのは当然のことだが、それに呼応する市民それぞれの理解とアイデア、その具体化と実践が大切だなと改めて思った。

そういう意味で、ここすし匠五条は地域の中でアイデアと存在感で地方創生に取り組んでいると言っていいだろう。

さらに女将浩実さんは枕崎の風景を撮るカメラウーマンでもある。毎日のように枕崎の風景と味をNSNで発信し続けている。

「小泉智資副市長がこの店を強く推す気持ちがよくわかりますね」とタニカツさん。さてと枕崎創生について、もう少し話を深めようか。じゃあもう1杯!

(文と写真:しみてつ)

住所 鹿児島県枕崎市岩戸町509
電話 0993-72-8089
営業時間 18:00〜22:00
定休日 月曜日

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