今回は東市来町湯田、湯之元だ。合併を経て日置市東市来町湯田となっている。
JR鹿児島中央駅から各駅停車で30分ほどの移動だ。夕方6時くらいに着けば、帰りの終電は午前零時少し前だから、鹿児島市内から足を延ばしても5時間くらいは楽しめるということだ。

湯上りでくつろぐながやん(右)と七枝ディレクター

あいにくの雨だった。湯之元駅にはすでに今回の同行者の「しみてつ×ながやん妄想ラジオ」の相方ながやんこと永山由高さんとディレクターの七枝大典さんが先着していた。酒場探訪の相方タニカツさんは少々遅れるとのことで、じゃあ待つ間に温泉に浸かろうと。酒の前のひとっ風呂だ。湯之元温泉の公衆浴場、なんと安いところは150円、いちばん高いところでさへ500円で入れるのだ。ぼくたちは地元住人ながやんのすすめもあって、いちばん高いゆかいだ温泉つれづれの湯へ。ゆったりしていてちょっとしたリゾート気分が味わえる。泊まらなくても、500円でも、充分贅沢な気分に浸れるのだ。

ながやんが案内してくれたのは「炉ばた焼き 味覚」。住宅街の中に静かに佇むって感じだけど、一歩中に入れば広々とした店内に長いカウンターが。ああ、いかにも炉ばた焼きという雰囲気だ。
「炉ばた焼き?」という若い人も多いかもしれない。これはぼくらが若い頃、そうバブル経済期に絶頂を極めた居酒屋のスタイルだ。新鮮な魚介類、肉類、野菜類を氷を敷き詰めたネタケースの上にどっさり並べ、客の求めに応じて炭を熾した炉で焼き上げ皿に盛り、大きなヘラに乗せてカウンターをまたいで客に差し出す。必然的にカウンターは炉を囲むように設えられる。客は自分が注文した料理が目の前で調理されるのを眺めながら待つ。オープンキッチンの走りだ。

大将に少々話を聞く。
野菜は当たり前だがほぼ地場のもの。魚は以前は江口浜、江口漁協に水揚げされたものが主流だった。しかし、江口浜の水揚げは以前よりグッと減っているとのこと。最近では、大将の息子さんが朝、3時頃には家を出て鹿児島市中央魚類市場まで買い付けに行くそうだ。魚を選ぶ目利きとこだわりは父親譲りということなんだろう。
その日のカウンターには、サザエ、イワガキ、サンマ、カンパチ、サーモン、キビナゴ、マグロなどが並んでいた。うまそうに見えないはずはない。風呂上がりで乾いた喉がなる。そうだ、とりあえず生ビールだ。喉を潤して、その間に何を食べるか考えよう。
考える間にジョッキを1杯。刺身盛り、ナス味噌炒め、串焼き盛り合わせ、豚キムチ、出汁巻、漬物盛り合わせなどを勢いよく注文する。で、もう1杯。

この夜は「しみてつ×ながやん妄想ラジオ」の配信も兼ねていた。で、その定刻にはビールをお湯割りにかえて、さらにヒートアップを謀る。焼酎は隣接するいちき串木野市の田崎酒造七夕だ。味覚専用の飛び魚が焼酎を飲んでいるイラストのラベルが微笑ましい。次にいつ来るともわからないのに、5合瓶をキープする。いや、飲みきってしまうつもりでいたのかもしれない。ぼくとながやんはそんな勢いで飲み続けた。当然話も熱くなってくる。地域おこし、地方の活性化が話題となり否応無く盛り上がる。
ここでは話の内容には触れない。興味のある方は「しみてつ×ながやん妄想ラジオ」のアーカイブをご覧いただきたい。

ところでぼくは、とある鹿児島の地方都市で大人気の炉ばた焼き店をもう1軒知っている。安くてうまくて威勢がよくて元気で、そのまちでは幅広い年齢層から支持される地元でも屈指の人気店だ。だがそのまちも全国の地方都市に共通の問題を抱えていた。過疎だ。地方のまちで商売を続けていこうとする者にとって、過疎、人口減はとてつもなく大きなダメージをもたらす。客がいなくなるのだから、当然のことだ。その店の若い経営者はリスクを承知で天文館に出店することを決めた。天文館だって南九州最大の繁華街と言われた頃と比べると、その勢いの翳りは否めない。しかしその決断の背景には緻密な計画があり、それを支える〈動く勇気〉があるのだと思う。

味覚の大将が厨房で動き回る姿を眺めていた。なんとなくだが〈動かない勇気〉という言葉が思い浮かんだ。この人はこの店の歴史の上に立ち、ここで頑張り通すのかもしれないなあと思った。いや、彼のことはその日知ったばかりだ。ほんとうのところはどうかわからない。

〈動く勇気〉と〈動かない勇気〉

何れにしてもこの人たちは、自分の動きが地域にそれなりの力を生み出すと信じているに違いない。彼らも彼らのまちも頑張れ!と思った。
いつのまにか小上がりはほぼ満席になっていた。

(文/清水哲男)

炉ばた焼 味覚
日置市東市来町湯田3316-30
電話 099-274-0330
営業時間 18:00〜24:00
定休日

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